山越編集長の知恵袋
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山越編集長の知恵袋

編集長 山越信治
<プロフィール>
(一社)長野県調理師会 副会長(相談役)
信州の名工会会員(調理審査員)

4月8日 花祭り

4月花祭り

お釈迦様が生れた日、生れた場所が花園だった事から花祭りといわれます。お釈迦様は生れて直ぐ、七歩あるき天を指し、片方の手で大地を指した時、天から甘い龍の涙が落ちた故事から甘茶を掛け、五穀豊穣を祈ったのです。
◎お釈迦になった話し
本来は過熱して失敗した事。刀鍛冶、陶器、料理、等ですが、職人が失敗すると「お釈迦になった」といいます。これは高度の洒落で、4月8日は江戸ッ子が読むと「ひがつよか」に読めるでしよう、そこで加熱して失敗したことを云う様になりました。

4月始め 入学祝

4月赤飯とマッチ
4月始め 入学祝の赤飯に南天の葉、御返しは硫黄
子供の入学祝に赤飯を炊いて、重箱に詰め、隣り近所に配られる事もありました。赤飯の赤は太陽の色、晴れの日の祝いを意味し、南天の葉を添え、難を転じる意味から添えたのですね。現在、熨斗の掛紙に南天の絵が描かれてあります。赤飯の入った重箱を頂きますと少し前迄は、「付け木」(硫黄が付いた火の移動に使った物)を入れた物ですが、現在は硫黄が無いですからマッチを入れる方も居ます。意味は硫黄、(祝う)の洒落ですね。

3月18日頃から お彼岸と花見

3月名前付き3月18日頃から お彼岸と牡丹餅
故人になられた方が此方側、(こちら側)に来る此岸が彼岸に成り、お参りして故人を偲び牡丹餅を作ります。
牡丹餅は春、秋彼岸にはおはぎと呼び、小豆餡の小豆の赤が邪気払いすると言われています。

3月下旬から4月中旬 花見
陽気が良くなってくると、外で花を見ながら食事も良い物ですね。
花見には団子が付き物ですが、庶民的には歩きながら食べられます。
赤は花、白が雪、青は春山を意味し、餅は餅米から、団子は米粉の違いです。

3月3日 上巳(じょうし)の節句(雛祭り)

2月3月名前付上巳(じょうし)の節句と言いまして、上旬の最初の巳の日の節句です。平安時代宮中行事で、紙で作った人形を厄を移して流し、邪気を払うことから江戸時代に雛を飾り雛祭りとして年々盛り、現在に。
◎菱餅
菱形に切って三段の餅は上から赤、白、青(緑)になっています。青い山に残雪の白、上段が花の色です。菱形は女性の象徴を表しています。
◎蛤
蛤の殻の蝶つがいは他の殻では絶対に合いません。そこで嫁いでも和合の象徴として、旬の蛤を食べるのですが、八代将軍吉宗が伊勢の蛤が売れない事から、奨励したと言われます。
◎さざえ
雛人形は髪の毛が耳に掛かり、良く聞こえる様にと、耳に似ているさざえを食べる様です。さざえは旬ですね。
◎草餅 蓬餅(よもぎもち)
蓬は春一番早く成長する植物で、古来より蓬を入れた草餅を食べ、蓬を軒下に刺し、女の子の成長を祈る物でした。
蓬の字は仙人の住む、蓬莱山(ほうらいざん)の蓬という字です。仙人は早く成長する蓬を食べ、山の中で森林浴する、これが長寿と考えたのでしょう。
◎散らし寿司
岡山のばら寿司が海のない京都に伝わり、海産物と春の色、黄色や緑、赤を散らし、花やかにして成長を祈る食事です。
◎雛祭りと潮干狩り
雛祭りと潮干狩りは無縁ではありません。雛祭りの起源は水辺で行う儀式の流し雛送りがある。潮干狩りはこれを行楽したもので、最初は女性の行事で、次第に老若男女、家族揃って楽しむ行事になったもの。潮干狩りは、浅利、蛤、さざえ、青柳を狩りして頂くのも季節です。

2月8日 初午と稲荷

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◎稲荷を食べる
伏見稲荷の稲荷山に稲妻が走り、初午の日に降りたといわれ初午の日に稲荷の祭りをする慣わしがあります。そこで2月になると、稲荷、油揚げ料理を食べるのが旬ですね。稲荷寿司や油揚げで巻いた信太巻きです。
稲荷は稲生(いなり)を意味し、稲が生まれる。その使いが狐ですね。米を食べる害獣、ねずみを狐が駆除し、害鳥のスズメは伏見稲荷の参道に行きますと焼いたスズメを土産として売られています。害虫は稲光(いなびかり)が退治すると言われています。これが豊作を祈る稲荷の意味でしょう。

2月3日 節分

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豆まきは、福を招き鬼を追い払う。平安時代鬼祓い(おにっぱらい)の儀式と言われ、その後、江戸時代から現在に引き継がれた
◎豆まき
元来、節分とは季節の分かれ目の日で、立春、立夏、立秋、立冬の前日を指し、一年4回節分がある。立春は旧暦の元日に近い事で重視されました。
豆は魔滅、魔目に通じる事から鬼祓い(おにばらい)に撒いたのだ。煎った大豆を使用するのは、せっかく鬼を封じ込んでの豆から新芽が出ない様に加熱して撒き、雷の鳴る頃迄に、自分の歳の数だけを食べる先人の工夫であります。
◎節分の鰯
鰯の匂いを嫌う鬼を祓う(はらう)為、鰯の頭を柊(ひいらぎ)の枝に差し戸口に飾ると鬼の目を柊で刺し、入ってこない。また鰯の匂いで誘い出し、出た処を柊のトゲで刺す。
地方によっては、木を割り、墨で13本の筋を付けて玄関に飾ると、13本あり、鬼が月を間違えたと入ってこない。節分に鰯や大豆を食べさせる工夫がありますね。
◎恵方巻き
海苔巻き、恵方巻は関西から食べられ、全国的に広がりました。
七福神に因み、干瓢、椎茸、胡瓜、玉子焼き、田夫、蒲鉾、野菜の7種を入れ鬼を巻き込むという意味で海苔巻きをその年の恵方を向き無言でかぶりつくというものだ。
豊臣秀吉の家臣だった堀尾吉晴が節分前後に巻き寿司の様な物を食べ、出陣したところ、大勝したという言い伝えという説。
江戸末期に大阪の商人が商売繁盛を祈願して鬼を巻き込んで食べたという説もある。
◎節分面白話
東北の福島県二本松市では、「福は内」のみか「福は内、鬼外(おに外)」と唱える。二本松藩の藩主丹羽(にわ)光重。「鬼は外」が「お丹羽、外」と聞こえる為「おにそと」の掛け声になったという。

1月15日 小正月 ドンドン焼き

各地で異なりますが、門松を燃やし、豊作を祈り餅をついて木の枝に付け、稲穂に見立てたり、繭玉に見立てたりして、焼いて、邪気を取り払い頂きます。農業に携わる地区では農機具を供え、感謝と豊作を祈願します。

1月11日 鏡開き

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お供え併は鏡併といい、切るという一言葉は忌言葉で、鉄製の包了は使わず、木槌で開く、小豆餡で汁粉にしたり、雑煮にしたりして頂きます。

◎江戸時代初期迄は1月20日でした。武士は刀開き、刀の刃と柄を開く事から刃柄(はつか二十日)開きでした。女は初顔を開く(二十日を開く)化粧して外出が出来た。ところが三代将軍家光が4月20日に亡くなった事で蔵開きの11日に鏡開きになりました。

1月7日 人日(じんじつ)節供

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古来中国では、鳥の日、人の日があり、これが人日の節供でこの頃には野菜が少なく、春の七草と言われる、せり、なずな おぎょう、はこべら 仏の座 鈴菜(かぶ) すずしろ(大根) これぞ七草と覚え、七草粥にして頂きます。

粥には、「入れ粥」と言いまして、炊いた飯に湯と具を入れて炊く。

炊き粥は米から水を多くして炊いたものだ

何故七草か?八草でも良いのに。七に意味があるのです。記憶の限界が七桁と言われ、七桁だと覚えられる。七音 七つ道具 七福神 が縁起に成り、郵便番号も七桁になっています。

1月2日 書初

とろろを食べる

古来、宮中では事始め、書初もそうでした。

書初は墨を摺ったことから、摺り下ろし、と言いまして、とろろ芋をたべます。長芋や自然薯、等のとろろ芋は11月頃掘り出しますが、新芋はアクが強く、黒くなる率が高い。堀った芋は地下室に寝かせ、アク抜きして正月頃には美味しく食べられる事から行事食になったのでしょう。